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水舟の通り土間

I

Interior

Dates:   2019/10-2020/9

Site Gifu, Japan

Building use:  Hotel

Site Area:   --㎡

Total Area :   100㎡

Photo by Yoshiro Masuda

敷地は岐阜県郡上市八幡町。

江戸時代初期に整備された城下町の風景が今もなお色濃く残っている。歴史ある家屋と豊かな水に囲まれて日々を営む、そんな人々の暮らしの息遣いを感じられる町並みが大きな魅力であり、年間600万人を超える観光客が訪れる。

こうした街並みは国の重要伝統的建物群保存地区に指定されている一方で、多くの空き家の存在が問題となっている。

この計画は、しばらく空き家となっていた裏路地に佇む町屋を一棟貸しの宿泊所へと改修することで、建造物保存と地域の活性化に寄与するプロジェクトである。

 

郡上八幡は長良川の上流に位置し、奥美濃の山々から流れ出た吉田川、小駄良川が合流する地点にある。豊かな湧き水に恵まれ、町家の軒下には川から引いた水路が流れるなど、「水」が人々の暮らしに浸透している。

町のあちこちには「水舟」が見られる。これは湧水や山水を引き込んだ二槽または三槽からなる水槽のことで、最初の水槽が飲用や食べ物を洗うのに使われ、次の水槽は汚れた食器などの洗浄に利用される。さらにそこで出たご飯粒などの食べ物の残りは、そのまま下の池に流れ、池で飼育している鯉のエサとなり、水は自然に浄化されて川に流れこむという郡上八幡特有の水利用のシステムである。

清流の文化の源となっている2つの川、防火・生活用水として利用され街中にはりめぐらされた水路、100ヶ所以上の湧水地や水舟によって、至る所に水の存在が垣間見え、どこにいても水の音が聞こえてくる。

 

敷地は裏路地に面しており、改修前の室内は日当たりが悪く薄暗い空間となっていた。

そこで建物の1階最奥部に全面トップライト天井の浴室を配置し、浴室とリビングの間の壁をガラス張りとすることで、浴室が坪庭の役割を果たし、リビング全体が明るく心地良い空間となるように計画した。

さらに玄関から浴室までを、市内の町屋の空間的な特徴となっている「通り土間」と見立て、吉田川から採取した川石入りのクリアエポキシ樹脂塗床仕上げとした。

川石は一つ一つ丁寧に塗装職人によって敷き詰められ、現場を最適な温度と湿度に管理したうえで、エポキシ樹脂内に封入した。

そうして形成された通り土間は、坪庭浴室から漏れた光によって透過と反射の表情の変化を起こす。それはまさに吉田川の川縁の表情を想起させ、日常的な郡上八幡の風景とオーバーラップする。

 

また外壁は白漆喰塗とし、開口部には県産の杉材を使用した上げ下げ窓を新設した。さらに「郡上本染」として重要無形文化財に指定されている藍染の店頭幕を館銘板として用いて、地域文化の色合いの中に溶け込む外観構成とした。

室内空間においては、既存建物の床下地として利用されていた板材を「ノコ目を活かした古材フローリング」として再利用し、また木部への塗装はこの地域でよく使用されるベンガラ塗装とするなど、随所に地域の特色を取り入れた。

 

伝統を重んじて再生した町屋宿泊所は、街並みの余韻に浸る滞在空間となった。

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